あと一日で

もう少しで、この職場からしばらく離れること
ができる。
嬉しいのか寂しいのか、それはよくわからない。

本当はすっぱり退職したかった。
幼子を長時間預けて片道1時間の通勤をしなが
ら妻・母・会社員の三役は私にはこなせないと
思ったから。
それにうちの会社には前例がないので、同じ立
場で共感しあえる人もいない。
しかし、世間の雇用状況や我が家の経済を考え
ると「復職の可能性が低くても一応権利だけは
取得しておくべきではないのか」と多くの人か
ら説得され（私に電話をかけてきて「もっと頭
を使え」と説教をしてきた人もいる）仕方なく
産休を取るという選択をした。
しかし、私は来年の夏くらいまで育児休暇を取
り、そのまま退職しようと思っている。
周りは「○○さんは来年戻ってくるから」とい
う前提で私に話し掛けてくるが、私のほうは内
心「あなたと会うのもこれで最後」と思いなが
ら接していたりするのだ。
果たして一年後、私はどう決断をするだろう？

私が直属の上司に妊娠を伝えた時、過去の例か
ら私が6月のボーナス後に退職するであろうと
勘違いされ、頼みもしないのにすぐ後任者がや
って来た。結局産休を選択したせいで引継ぎの
時間が異常に長く、先月あたりから私は会社に
行ってもすることがなくなり「毎日何しに来て
るんだろう・・・」と思うくらい暇だった。
それなのに毎朝きちんと起きて通勤するのは辛
く（最近は電車で席を譲られることが多いが）
目的がないまま会社と家の往復をする自分が馬
鹿な人間に思えた。
周囲も私をどう扱っていいのかわからない様子
で、日々大きくなるお腹を見て仕事をさせるの
をためらっている気がした。おまけに私の後任
者はやる気と負けん気が人一倍強く、その情熱
のわりに技術力がついていっていないので私の
気持ちはどんどん消耗していったのだ。

でも、そんな日々も明日で終わる。
ここにいた8年間、いろんな出会いと別れがあ
った。穴があったら入りたいような、恥ずかし
い失敗も楽しいことも今は過去の出来事。
来週から空席がひとつ増えても、みんな何も変
わらない様子で仕事を続けていくのだろう。
会社なんてそんなものだ。

どうか、みんなお元気で。